林芙美子関係

森光子の「放浪記」を観る

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森光子の「放浪記」を観る
森光子は「放浪記」の舞台で生きながらにして復活していた
五月二十四日。帝国劇場で「放浪記」を観る
森光子の舞台を観て、わたしは暗黒舞踏の創始者・土方巽と会った時のことを想
い出していた。動の極地としての静。最終場面の机に伏して寝るシーンは、疲れ
果てて寝るシーンではなく、死そのものの表出である。
二千回を突破して、さらに舞台に立ちつづける森光子の存在は、一人の役者
を超えて或る崇高なるものを感じさせた。もはやセリフも演技もいらない。森光
子という存在が舞台を成立させている。森光子一人の存在なくして、どんな
名優を脇に据えても「放浪記」は成立しないということである。
幕が降り、舞台の中央で無言で観客に挨拶する森光子に、いつまでも拍手
は鳴りやまなかった。
観客席に四十七歳で死んだ林芙美子がいて拍手しているように思えた。
久しぶりに感動した。家に帰ってからもなかなか寝つかれず、
最後の場面が浮かんでくるたびに涙が滲んだ。

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