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五十嵐綾野さんの寺山修司論(連載26)
寺山修司とゴシック
五十嵐 綾野
寺山修司の作品はゴシックだろうか。寺山の写真作品を見て思ったことである。たまたまその作品が「実在しない怪奇映画のスチール」をテーマにドラキュラなどをイメージしたものだったので余計にそう感じたのかもしれない。
ゴシック(ゴス)と一言で言っても、どこか曖昧さが漂う。ゴシック音楽、ゴシック文学、ゴシックファッション。あらゆるジャンルに枝分かれしている。アングラの定義と同じで、ゴシックの定義も存在しないのではないかと思ってしまう。
日本に今、氾濫しているゴシックは「日本風ゴシック」である。主に「和ゴス」あるいは外国人の間で「ジャパニーズゴシック」と呼ばれている。それはもはや本来のゴシックとは離れて、新しいジャンルなのではないかと騒がれている。
誰が見ても、西洋のゴシックとは違うことがわかる。ところが、西洋文化と日本の融合である「和ゴス」は寺山が作り出した舞台と同じであることに気づく。土着精神に溢れていてドロドロしている。憧れやお洒落とは程遠い寺山作品である。それが、お洒落なファッションの一部として扱われているのだ。
ゴシックと聞いて想像するのは、耽美主義、猟奇趣味、バンパイアといったようなものである。薔薇、十字架、燭台。これらの単語を見てもわかるように、明るいものではない。陰気臭く、ダークな世界をこっそり楽しむものという雰囲気である。ゴシックに興味がある人が必ず挙げる人物は、澁澤龍彦である。大抵その後ろに寺山修司の名前がある。寺山のルックスを見ても、ゴシックに縁があるとは思えない。
「和ゴス」の始まりは一体どこにあるのかについて考えると文学は欠かせないだろう。江戸川乱歩、澁澤龍彦、寺山修司らが想像しやすい。もちろん、海外のバタイユやサドの文学も影響を与えている。
寺山からゴシックに走る人もいるだろう。逆にゴシックから寺山に走った人もいるだろう。私は10代の頃から、寺山とゴシックに。どちらが先だったかというより系統が似ているものが、芋づる式にくっ付いてきたという感じである。
勘違いする人がいるのだが、ゴシックとゴスロリ(ゴシック&ロリータ)は別のものである。ゴスロリとひとくくりにして呼んでいるのはメディアの勝手な思い違いである。面白がって取り上げる人がいるのが困る。
寺山は、作品の中で、様々な容姿を持った人に重要な役割を演じさせている。世間から隠さなくてはいけないという意識とは反対である。それは、完全で完璧な人間よりも欠けている分、大事なものを持っていると考えていたからである。一つの個性として受け止めている。そこに美しさを見出していた。グロテスクと美は結び付く。寺山のそのような行動を「奇形マニア」と片付けてしまうことは悲しいことだ。見世物小屋を「見世物」として見ているのと同じことである。
退廃的な文献がファッション化している。そして、元々は西洋の物が日本文化と混合して出来上がった「和ゴス」が今度は世界中で人気になっている事実。日本人の西洋文化に憧れを持ちすぎるという精神にも関係がある。自分に欠けているものを求めるのは当たり前のことである。
西洋の建築物や美術品を見てもわかるように、そこにあるのは完璧な「美」である。隙がないと言ったら良いだろうか。完璧な「美」も素晴らしいものだが、日本の良い意味での抜け感が入った「和ゴス」に人気が集まるのはよくわかる。
このように考えていくと、寺山とゴシックは関係性があると言える。今は少女漫画にもその影響があると言われるが、楠本まきや丸尾末広は昔から描いていた。要するに繰り返している。とにかくなんでもかんでも巻き込んでしまえばいいのだ。そうすれば何かが起こるかもしれない。
2009年9月25日
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