フジテレビ系列の教養エンターテイメント番組「お厚いのがお好き?」 に清水正監修の『~お笑い芸人で読み解く~ドストエフスキー「罪と罰」』 が2003年6月12日 24:35~25:05にオン・エアされました。
「お厚いのがお好き?」 #10 「罪と罰」
①オープニングタイトル
タイトル IN 「お厚いのがお好き?」
②BAR
女 「…この間の、お笑いライブ、とっても面白かったです」
男 「(クールに決めて)ありがとう。
…それから、誤解しないで欲しいんだけれど」
女 「…?」
男 「ファンの子を誘ったのは、君が、はじめてさ…!」
と、男、指でピストルの形を作って見せる。
女 「嬉しい…!私、夢だったんです。
夜景の見えるホテルで…」
男 「(興奮して)や、夜景の見えるホテルで…!?」
女 「あなたに激しく…」
男 「(さらに興奮)は、はげ、はげ、はげ…!?」
女 「突っ込んでもらいたいの」
男 「(喜びに震え)い、いいんですか…!」
女 「(ふいに)アツはナツいね~」
男 「(条件反射で)いや。それ、夏でしょ!」
女 「(感動し)素敵~!」
男 「(冷めて)そっちのつっこみね。ウンウン。だよね、だよね~」
女 「そして、その後、2人でシャワーを浴びながら…」
男「(復活し)シャ、シャワーを浴びながら…!?」
女、突然、本を取り出し…
女 「『罪と罰』について、熱~く語り合いたいの」
男 「…え?つ、罪と罰…?」
女 「もしかして、知らないの?ドストエフスキーの罪と罰」
男 「い、いや、ははは。も、もちろん知ってるよ。
あの、定食屋によく置いてある野球マンガだろ」
女 「それは、バツ&テリー」
男 「あ。あの、昔やってた猫とネズミの…」
女 「それは、トムとジェリー」
(冷たく)…もしかしてあなたって…」
男 「(ハッと気づき)…ボケ担当です」
2人の間に、寒い空気が漂う。
③研究室
博士 やあ。またお会いしましたね。
今晩、みなさんにご紹介するとっておきの一冊は、
ドストエフスキーの『罪と罰』です。
名作中の名作として、あまりに有名な小説ですから、
当然、みなさんも1度はお読みの事と思いますが…
え?何?まだ読んでない…?
ウッソ…!
ドストエフスキーの『罪と罰』を読んだ事がないなんて…
そんな人生はまるで…!
(インサート・インコの写真)
博士 せっかくかわいいインコを飼っておきながら、
あの、えもいわれぬ高頭部の香りを
一度も嗅いだ事がないのと同じ!
(と、匂いを嗅ぐフリをして…)
あ~、インコの高頭部を嗅いだ事がないなんて…
なんて寂しい人なんだ!
あなたの人生、それでいいのですか?
断じていけません!
さぁ、恐れる事はありません…勇気を出して、
私と一緒に「罪と罰」のページを開いてみようではありませんか!
④サブタイトル
10冊目 「お笑い芸人」で読み解く「罪と罰」
⑤「罪と罰」ってどんな本?(VTR1)
N 文学史上、もっとも誤解を受けている小説、「罪と罰」。
N 例えば、丸の内のOL。
30人にこんな質問をしてみた所…
テロップ 小説「罪と罰」のイメージは?
N なんと、30人中、○○人が、「なんか、むずかしそう~」
…と、答えたのである。
N たしかに、この「罪と罰」
岩波文庫版で、上中下巻あわせて1209ページ。
新潮文庫版で、上下巻あわせて○○○ページ。
…と、とてつもなく分厚いシロモノ!…しかし!
N そのあらすじは、たった5秒で説明できてしまうのだ。
いいですか?いきますよ?
(かけっこの時のピストルが鳴って)パーン!
N 大学を中退した貧しい青年が、
とってもけちな質屋のおばあさんを殺害してしまう。
…おわり。
N ホントです。ウソじゃあ、ありません。
え?そんな単純な話が、なんでそんなに分厚いのかって?
それは…!
N この本には、手に汗握るスリルや、古畑任三郎もびっくりの
サスペンス、はたまた心ときめくロマンスや
越後屋も顔負けの悪の陰謀などなど、
ワクワク、ハラハラドキドキが、
ふんだんに盛り込まれているからである!
N 今からおよそ140年前、
月刊「ロシア報知」に連載された「罪と罰」。
それは、現代で言うならまさに…!
月刊「オール読み物」に連載中の、西村京太郎の
十津川警部シリーズ、最新作!…のようなもの。
N そう!「罪と罰」は、誰もが楽しめ、
続きが読みたくなってしまうように書かれた、
究極のエンタテイメント小説だったのである。
⑥提供
女の手を必死に握っている男。
男 「…誤解してた。すっかり誤解してました。
そんな楽しそうな本なら、今から読むから!
すぐ読んじゃうから!ちょっと待ってて!
ね?ね?」
と、慌てて本を読もうとする。
女 「その前に、ひとつだけ教えて」
男 「え?」
女 「この番組って、どこの提供だったっけ?」
男 「それはもちろん、日産自動車の提供に決まってるじゃないか」
女 「……ふーん」
男 「…あ。すぐ読むから、今すぐ読むから!ね!ね!」
前CM
⑦研究室
斧を手に、「罪と罰」の1節を演じる博士。
博士 もう一瞬の猶予もならなかった。
彼はすっかり斧を取りだし、なかば無意識のうちに
両手でそれを振りかぶると、ほとんど力をこめず、
ほとんど機械的に、頭をめがけて斧の峰をふりおろした。
と、斧を振りかぶる博士。
腰の骨が「グキッ」となり…
博士 おうっ!!(以下、苦しみつつ…)
「罪と罰」の主人公、ラスコーリニコフは、
質屋の老婆を殺害してしまいます。
しかし、一体なぜ彼は、そんな恐ろしい犯罪を
犯してしまったのでしょう?
老婆殺しの動機を読み解く鍵は、なんと、意外な所にありました。
それは…なんでやね~ん!
…と、お笑いには欠かせない、「つっこみ」。
その「つっこみ」にこそ、事件の真相は隠されていたのです。
⑧ラスコーリニコフの殺人の動機(VTR2)
N ケチと評判の金貸しの老婆を殺害してしまった、
貧しい青年、ラスコーリニコフ。
N 実は、かれは、こんな考えにとりつかれていたのである。
N すべての人間は凡人と非凡人にわかれる。
凡人は服従を旨(むね)として生きなければならない。
ところが非凡人は、あらゆる犯罪を行う権利を持っている。
N なんと恐ろしい考え!
しかし…この非凡人とは、一体どんな人の事なのか?
いうならばそれは…
N 華麗なるツッコミが魅力の、ダウンタウン、浜ちゃん。
N そのツッコミは、たとえ相手がN尾彬、S原文太、N淵剛、
といった超大物であろうと、ひるむことはない。
N しかし、それと同じ事を、凡人である我々、素人がやってしまうと…
イラスト・K島三郎、N淵剛、S原文太にボコボコにされている素人
N 当然、命の保障はない。
N はたまた、とんねるずの貴さんはどうだろう。
N Sニンに蹴りをいれるわ、Mニング娘。に抱きつくわ、
かなり過激なツッコミぶり。
N しかし、これと同じ事を、凡人である我々、素人がやろうものなら…
イラスト・警察官に取り押さえられている素人。
N 確実に、人生を棒に振ってしまう。
N もうおわかりだろう。
大物の頭をはたく、アイドルに抱きつくといった、
一線を越えたツッコミは、素人(凡人)には決して許されない。
しかし!
芸人である彼らは、世の人々を笑わす為なら、
その一線を踏み越える事が許されてしまうのだ!
N これこそ「罪と罰」の主人公、ラスコーリニコフの抱いた、
殺人の動機に他ならない。
N 自らを「非凡人」と信じた彼は、
貧しい自分の為にその身を犠牲にしたかわいい妹を救う為なら、
(彼の妹は、好きでもない金持ちと婚約していた・イラストで説明)
そして、大学で学問を続け、いつの日か貧しい社会を救うためなら、
ケチな金貸しの老婆から金を奪っても許される。
殺人という一線を踏み越えても罪にはならない…
そう考えたのである。
N しかし…
犯行後のラスコーリニコフを襲ったのは、激しい心の動揺だった。
それはまるで…
N 「今日は無礼講で!」という、社長のスピーチを真に受け
酔った勢いで、散々つっこんだはいいが、
翌日からは、青ざめた人生を送る。そんな素人と瓜ふたつ。
N そう。ラスコーリニコフは決して、浜ちゃんや貴さんではなく、
我々同様、ただの「凡人」だったのである。
⑨研究室
机の上にトンカツが置かれている。
博士 ところであなたは、
とんかつをおいしく食べる方法をご存知ですか?
え?知らない?
(バカにした顔つきになって)
それではお教えしましょう。
それは…
決して、端っこから食べない事!
端っこの、この部分…お肉的には、ほぼ脂身!
そんな脂身から口にしたら、口の中がギト…ギトギトになって
折角のお肉の味がわからなくなってしまいます!
したがって、とんかつを食べる時は、必ず!大胆に真ん中から…!
(…と、食べて)
ん~ん!○○○○!(ロシア語で美味しいという言葉)
たったこれだけの事で、とんかつが何倍も美味しく感じられるように、
なんと!
小説「罪と罰」にも、知っているだけで、その面白さが何倍にもなる、
ちょっとしたウラ技があったのです!
⑩『罪と罰』を楽しむウラ技(VTR3)
N 主人公のラスコーリニコフを始め、
ザハールイチ・マルメラードフ、プロコーフィチ・ラズミーヒン、
ピョートル・ペトローヴィチ・ルージン…などなど、
「罪と罰」に登場する人物の名前は非常にややこしい!…しかし!
N 彼らの名前には、ある秘密が隠されていたのだ!
N 例えば、主人公をジリジリと追い詰める、古畑任三郎ばりの
頭脳派検事、ポルフィーリィ。
これは、国のお役人の制服を意味するロシア語、「ポルピレウス」
をもじってつけられた名前。
つまり、日本風に言うなら「国野役人(やくひと)」といったところ。
N さらに、神を深く信じ、主人公の心の支えとなるヒロイン、ソフィヤ。
実は、ソフィヤとは「神の叡智」を表す言葉。
つまり、日本風に言うなら、「神野知恵子」さん、となる。
N これと同じく、なんと、主人公、ラスコーリニコフも、
「割り裂く」という意味の、「ラスコローチ」をもじってつけられた、
いわば、「切崎割男」とでもいうべき名前だったのだ!
N もう、おわかりだろう!
ドストエフスキーは、ロシア語さえ知っていれば、
まるでおやじギャグと思えるほどの、わかりやす~い名前を
登場人物たちにつけていたのだ!
N そこで、『罪と罰』を楽しむ為の、ちょっとしたウラ技、その1…
“ロシア語講座を聴くべし”
N ちなみに、主人公、ラスコーリニコフのフルネームは、
ロジオン・ロマーノヴィチ・ラスコーリニコフ、
そのイニシャルはロシア語で「PPP(エル・エル・エル)」となる。
N ためしにちょっとひっくり返してみると…。
な、なんと!恐ろしい事に、「666」という数字が現れたではないか!
(PPPをひっくりかえすと666に見えるのです)
N 実は、この数字。キリスト教において、悪魔を指す数とされ、
人々に恐れ、嫌われてきた数字だったのだ!
N そう!ドストエフスキーは、主人公の名前に「666」の数字を
忍ばせる事によって、殺人を犯す彼に、悪魔の刻印を押していた
のである。
N このように、「罪と罰」の中には、キリスト教に詳しければ、
より楽しめる仕掛けが、無数にしかけられている。
N そこで、『罪と罰』を楽しむ為の、ちょっとしたウラ技、その2…
“教会に通うべし!”
N こんな簡単なウラ技で、「罪と罰」の面白さが何倍にもアップする
事まちがい無し!
さっそくあなたも、試してみてはいかがだろうか?
⑪BAR
男、本を閉じつつ…
男 「…ちなみに、キリストが十字架にはりつけにされた、前の日、
最後の晩餐を13人で取った事から、キリスト教では、13って数字は
とても不吉とされてるんだよねぇ。
はっはっはっ…」
と、女の肩を抱く。
女 「(うっとりと)素敵…」
男 「実は、ゴルゴ13の13も、そこから取られた数字なのさ」
女、肩にかけられた男の手を叩き落として…
男 「あっ!あたっ!(なんだよ!)」
女 「13の話をするなら、
実は「罪と罰」も、13日間の出来事を描いた物語なんだ。でしょ!
なにがゴルゴよ!」
と、そっぽを向く女。
男 「い、いや、あの、まだそこまで読んでなかったから…」
女、男をキッとにらむ。
男 「読みます!今すぐ読みます!
って、あと2冊もあんの!?
やっぱ長いよドストエフスキー!!」
後CM
⑫研究室
博士 ドストエフスキーの「罪と罰」は、
確かに、究極のエンタテイメント小説といえるでしょう。
しかし、そのウラには深いテーマが隠されているのです。
それに気づかなければ…
(インサート・九官鳥の写真)
せっかくかわいい九官鳥を飼っておきながら…
オハヨー。オハヨー。キューチャン。キューチャン。
…と、言葉の1つも覚えさせないのと同じ!
博士 あなたの人生、それでいいのですか?
さぁ、「罪と罰」の読破は、もう目の前です。
⑬『罪と罰』とドストエフスキー(VTR)
N 貧困に苦しむ社会を救う人間になるため…
そう信じ、罪の意識もなく、
金貸しの老婆を殺害してしまったラスコーリニコフ。
しかし、その直後、彼を襲ったのは、激しい心の動揺だった。
N そんなある日、彼が出会ったのは、
貧しさゆえに町で体を売って働く少女、ソフィア。
彼女の心の美しさにうたれた、ラスコーリニコフは、
彼女に罪の告白をする。
「ぼくだって、人びとに善をもたらそうとしたんだ。
幾百、幾千という善行ができるはずだったんだ。
ぼくにはまるっきりわからないんだ。
なぜ爆弾や、包囲攻撃で人を殺すほうが、
より高級な形式なんだい?」
N いったい何が善で、何が悪なのか…。
多くの疑問を抱えたラスコーリニコフに、ソフィアが勧めたのは、
警察に自首することだった。
「そうしたら神様が、あなたにまた生命を授けてくださる」
N 一部の貴族が財産を蓄え、庶民が貧困に苦しんでいた
150年前のロシア。
N ドストエフスキー(当時28)は、小説を執筆するかたわら、
農民達を過酷な労働から解放するための、
革命運動に加わっていた。
N しかし、政府の厳しい取締りによって、ドストエフスキーは
逮捕されてしまう。
N 懲役四年。送られたのは、極寒の地、シベリア。
貧しい農民たちの為…そんな想いの果てに待っていたのは、
地獄の重労働だった。
N いったい何が善で、何が悪なのか…。
その想いは、「罪と罰」を書く15年前、シベリアの地で、
ドストエフスキーが抱いた想いに他ならなかった。
N そう!「罪と罰」とは、
多くの矛盾が渦巻く社会に、ドストエフスキーが投げかけた、
「なんでやねん!」という、深く鋭い、ツッコミだったのである。
⑭BAR
男 「(嬉しそうに)よし!読み終わった!」
女 「わ~!すご~い!」
男 「じゃあ、早速、ホテルに行って「罪と罰」について語りあおうか」
女 「それは、ダ~メ!」
男 「えっ?なんでなんで?どうしてどうしてどうして?」
女 「あなた、ボケ担当でしょ?
わたしは、ドストエフスキーみたいに、
激しく、深~く、つっこんでくれる人が好きなの。
じゃあね」
と、去って行く女。
男、慌てて追いかけ…
男 「ちょ、ちょ!
わかった!わかった!あしたから、ツッコミ担当にな
るから!
相方と代わってもらうから、待って!」
⑮研究室
博士、深いため息をつき…
博士 貧困と混乱の時代を生きた作家、
ドストエフスキーは、こんな言葉を残しています。
「人間には幸福のほかに、それと同じだけの不幸が必要である」
果して、主人公、ラスコーリニコフは自首するのでしょうか?
そして、彼の魂は救われるのでしょうか?
感動のラストシーンは、あなた自身の目で確かめて下さい。
それでは、今夜はこの辺で。
ダスビダーニャ。
⑯スタッフロール
⑰提供
カウンターで電話をかけている男。
男 「あ。お前?
あのさ、お願いがあるんだけどさ。
あしたから、コンビの立ち位置変えてみない?
うんうん。
お前がボケて俺がつっこむ、みたいな。
え?何?
この番組の提供はどこかって?
そんなの、日産自動車にきまってるだろ~!
それより、どうかな~。
お前、ボケでもいけると思うよ~」
と、延々しゃべってる男。。